ある老人が翌月に10万円を用意しなければならない。
その為にメルカリで在庫を売るのだ。
そんなミッションを与えられた僕は
その任務を遂行する事になった。
やめときゃよかった・・・
義理の兄からの紹介だった。
まずこれが引き受けた事の発端。
断るに断れない。
しかも僕は今「ネットショップ相談」の仕事を再開したところで
早く実績を出したかった。
依頼はネットショップの開設だったが
早く売らなければならないなら経験上メルカリだ。
依頼主の79歳の老人を僕は「寅さん」と名付けた。
寅さんは何故か個人情報を出す事を頑なに拒む。
だから本名も顔写真も出せない。
寅さんはメルカリで520アイテム売ってきた実績がある事を僕にアピールした。
それじゃぁ自分で売れば10万円稼げるんじゃないの?
誰もがそう思うはずだろう。
率直に尋ねようと思ったが
寅さんは自分から口火を切って話し始めた
「実はメルカリから強制退会させられてアカウントは使えないんです。」
そしてその理由は
「悪い奴に乗っ取られて、そいつがやった悪さを全部こちらのせいにされた」
と語るのだ。
僕は寅さんの言葉を信用するしか無いんだけど
本当かどうかは本人にしかわからない。
この時の本音は
「なんか怪しいなぁ」
「やめときゃよかったかなぁ」
しかし既に何とかしてもらえるという雰囲気を出す寅さんの前に
苦笑いで「何とかしましょう!」と言うのが精一杯だった。
不用品ではなく仕入れた商品を売る難しさ
メルカリはその性質上
「不用品」や「中古品」を「個人」が売るのが主流だ。
もちろん業者も参入していて
中古だけではなく新品も購入できる。
ただ、その場合はやはり
「お店の信用」と言うものが重要になる。
そして寅さんがこれまで売ってきたという実績
520アイテムは殆どが不用品だったという。
自分や家族が欲しいと思い実際にお金を払って買ったものと
人に売るために売れると思って仕入れたものとは
全く違うモノであるという認識が必要だ。
これまで売れたからこれからも売れる。
寅さんは自分が思い違いをしている事を
この時はまだ知る由もない。
つづく